私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
突然部屋に響いた声に、時が止まったような気がした。
…今の、声は。
そんな、あり得ない。だって、だって、あの人は確かにあの時……。
目が熱くなるのが分かる。季龍さん肩越しに、車椅子に乗った老婦がいる。あの時と、同じ。あの優しい面影の…。
「…お…ばあ、さま……?」
「…ことは、ちゃん。ことはちゃんなのね」
微笑んだ老婦の面影がおばあ様に重なる。
…本当におばあ様、陣之内華江様だ。
で、でもどうして…。
目の前の状況が信じられなくて、言葉が出て来ない。これは、どういうこと?
「ッな、なぜお前が…」
私以上に、この場で一番驚いている陣之内総一郎は、自分の妻を幽霊でも見るような目で見つめる。
そんな夫に華江様は、彼女からは想像もできない冷え冷えとした視線を向けた。