飛べない翼
恋は突然やってくる
「あー、みなさん。おはようございます。」
新学期の日。密集した狭い体育館の教壇の上ではありがたい(多分)校長の挨拶が始まった。
それと同時にヒソヒソと話し声も聞こえてくる。
日向も、そんな一人だった。
「相変わらず、校長の話は長いよね。」
「まったくだわ。」
日向の横では、クラスメートの芹沢ちさが暇そうに枝毛探しを始めた。
「そうそう。保健医の田中先生、産休に入ったじゃん。」
ちさは、枝毛を見つけたらしく、手持ちのハサミで枝毛を切り落とす。
「知らなかった。さすが、報道部」
芹沢ちさは、報道部に所属している。
と言っても、部員5人。
のどかな女子高。
月一の報道部からの学校新聞なんて大半は意味のない話題ばかり。
大半の生徒は見向きもしないし、下手したら、存在すら知らない。
「でさ、これまた。代わりの保健医が男らしい。」
勝ち誇った微笑みで芹沢ちさは日向に話しかけた。
「男ー!」
「こらー!そこっ!」
教壇からマイクを使って日向は注意を受けた。
「日向、驚きすぎ。声デカイよ」
ちさから日向は軽く睨まれる。
「ゴメン。」
日向はちさに両手を合わせた後、日向は体育館の隅の椅子に座っている真新しい顔をした先生の方を見る。「でも、何処にいるのよ」何度見ても、新任の先生の中には男の人はいなかった。
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