紅茶色の媚薬を飲まされて

「……どうした。付き合うことになったんだよな?」

妙なカバリの様子に何か嫌なものを感じて王が駄目押しとばかりの詰問すると、カバリは軽く口元を押さえ目を泳がせる。

「実は、その。媚薬が抜けるまでということで、今朝方までそういうことをしてたせいか……ネルがすぐにぐっすり寝てしまいまして、全く起きる様子がないのでいま登城してるわけでして」

「……つまり?」

しどろもどろになって、一体何を言っているのか分からない側近はきっと自分でも何をしたかよく分かって無いのだろう。途方に暮れたような瞳で王を見た後で、一呼吸置いて呟いた。

「付き合うとかそう言う話をする余裕が無かったというか、その、俺も初めてで手加減とか全く分かんなく……」

「……じゃあなんだ。お前、まだ付き合って欲しいとも、結婚して欲しいとも言ってない訳か?やることは明け方までしっかりやっといて?」

「想いが通じたと思ってこのまま妻にする気ではいたんですが、確かに言葉では伝えてなかったような気がしますね。……というか、気持ち良すぎてそこまで考えが至らなかった自分が悪いのですが」

「んな部下たちの性事情こっちは全く知りたくねえんだよ、……ったく、もう今日は休んでいい。さっさとネルのところまで行ってプロポーズでもなんでもしてこい、このアホ」

口が悪いだけで、実は常識人であり愛妻家でもある王はこういうことには手厳しい。
男なら最後まで責任持て、と吐き捨てると、カバリは愚問ですとばかりに頷いて走り出した。

そうして急いでネルのところに走っていったカバリだが、ネルが昨日のことはすっかり夢だと思っていたことにショックを受けたり、やり直しだとばかりにもう一度コトを致したり、身体が目的なのかと泣かれたり、初めてで加減ができないとゲロったりーーと結婚どころか付き合うまでにももう一波乱はあるのだけれど……それはまた別のお話。

一年後、未来の家臣がもう一人増えたと報告をもらった王は、口の端を上げ、エイプリルフールの嘘ではないことを確認するために新たな家臣の顔を見に向かいましたとさ。

end.

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