さよなら、大好きな人
「ラウルってヴァイオリン、弾けるの?」


「趣味程度、だけどね?弟にしか聴かせた事ないから下手かもしれない」



驚いたような表情を浮かべながら私が確認するように問い掛ければ、ラウルはどこか恥ずかしそうに苦笑交じりに答えた。



「へぇ……。……聴かせて、くれるの?」


「聴いて欲しいから、持って来たんだよ」



素直にすごいと思いながらも、ふと気になったことを聞いてみた。


ラウルは苦笑を深めてもちろんというように頷くと、ゆっくりとヴァイオリンを構える。

そしてゆっくりと、音が紡がれた。



私は音楽にはあまり詳しくは無い。立ち寄った街で耳に聞こえてきた程度で、自ら聴きたいと思った事はほとんどない。



だけど、ラウルの指で奏でられるヴァイオリンの音はとても優しかった。聴き入るようにそっと目を閉じながら心が暖かくなるような、そんな感覚だ。


だからか、私は純粋に好きだな、と思った。ただ直感的に、ラウルの奏でる音楽は好きだと思ったんだ。



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