心にきみという青春を描く



何度後悔しても後悔なんてしきれない。


なんで周りを見ずに道路に飛び出したのか。

なんで手押しの信号機を押さなかったのか。

なんで一緒にファミレスに行ってあげなかったのか。

なんで、なんでを繰り返しても、葵はもう戻ってこない。


二度とその笑顔を見せてくれない。二度と明るい声は聞けない。

もう二度と……葵に会うことはできない。



俺のせいで、俺をかばって、葵は死んだ。

これから見つけようとしていた将来も、この先にあったであろう幸せの続きも、ぜんぶ、ぜんぶ俺が奪った。


――『俺はお前のこと、許してねーからな』

当然だ。俺も俺が許せない。



『好きです』

なつめ。そんなにまっすぐ俺を見ないで。


『なぎさ先輩が好きです』


きみは葵とは正反対だった。

わき目も振らずに突っ走る彼女とは違って、なつめは超がつくほどの真面目で、石橋を叩くだけ叩き、慎重になりすぎて渡れないタイプ。

なのに、なんにでも一生懸命で全力で、スポンジみたいに吸収する。


本当に、赤ちゃんみたいだなって思った。

綺麗で、汚れがなくて、なにも知らない無垢な存在。


なつめ。きみはそのままでいて。

汚いものなんて、なにも知らないままでいて。


俺を好きだなんて、言ったらダメだ。

俺はなつめが思ってる人間じゃない。なつめみたいな人に、好きなんて言ってもらえる人間じゃない。


だから、なつめ。

俺は、きみの気持ちには応えられない。


俺のように汚くなってほしくないから、綺麗なままでいてほしいから、俺はもうなつめに触らない。

身勝手で、本当にごめん――。

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