心にきみという青春を描く
そして一夜が明けた。学校では通常授業があり放課後はいつもどおり部活に向かった。
昨日の出来事が夢だったように先輩が描いてくれた星はなくなっていた。美術室にはいくつものキャンバスが置かれているけれど、暗くならないと光らない絵の具なので、どれがあのキャンバスたちだったのか分からない。
「なつめちゃん、イーゼル準備しておいたわよ」
「わっ、詩織先輩、ありがとうございます」
先輩と並ぶようにして丸椅子へと座り、一般公募の美術展に向けての作品を描きはじめる。
私が描くのは先輩に宣言した青いフルーツ。
苺に林檎に檸檬に葡萄。それらの精巧なモチーフは美術室に用意されてあるので、私は観察しながらデッサンをはじめた。
思えば私は先輩に憧れて青い絵の具で絵を描きたいと思ったのだ。
染み渡る空のような色から深海に沈むような色の青はとても魅力的で。先輩が使っているコバルトブルーが使いたくて、先輩に少しでも近づきたくてこの青いフルーツを描こうと思った。
……でも、今は思うように筆が進まない。
――『こんなに素敵な絵を描けるなんて、先輩はすごいですね』
私ははじめて青いひまわりを見た時にそう言ってしまった。
なにも知らなかったとはいえ、無神経だったと思う。