夜桜は山奥の

現実離れ

目の前に現れたのは大きな屋敷だった。

塀に囲まれ、門のような鉄柵越しでしか見えなかったが、その迫力は腰を抜かすほどだった。
正面に見える寺院のような屋敷。


しかしそこは、以前見たことあるような場所だった。

「夢で見た気がする、鳥肌立つな…。」

あぁ、ここで天国行きか地獄行きか決めるのか。

しばらく屋敷を凝視していた。
庭は学校の校庭の4倍はある。

塀の中は異世界…。

しばらく囚人のように鉄柵からその異世界を見ていたが、入りたくても入ることができそうにない。
庭が整っているから、おそらく誰かいるのであろう。
門にインターホンが付いている訳でもないし…。

すると屋敷の庭に向かって何かが出てきたのが見えた。

「馬?」

庭を馬が走る。
その馬から声がした。

「行けー!にんじん!
良いぞ〜にんじん!!」

ああ、人が乗ってる。
やっと第一森人に会えた。

「にんじん、お前は最高だよ!
あぁ、今日も良い天気だな」

呼ぼうと思ったが無理だ。あんな幸せそうなにんじんを呼び止める事は出来そうにない。

すると後ろからパタパタと音が聞こえた。
振りかえると…

馬だ。
女の人が乗っている。

「誰だ」

この人女?と疑うほど低い声だ。
確かに長髪だけど、本当に女…?

「向こうで迷っていて…
目が覚めたらこの森にいて…
歩いたらここに来て…」

言いたいことが言えない。
2日は何も食べてないからだろう、頭は働かず、声も出ない。

「またか…?えっと、泥だらけで血も出てるけど、大丈夫?」

馬から降りてきたその人は私の目を見てこう言った。

「少し待って、すぐ戻ってくるから」

口調が優しくなったあの人はやはり女の人だった、
目がとても綺麗で和服を着ていて黒髪の長いポニーテール、しかも馬に乗っていて…かっこいい。

その人は馬に乗って屋敷の中へ入る。

異世界…けれど日本。
時代が違うとか?でも普通に話せた。
よく見ればにんじんの人も和服を着ている。


女の人は「またか」と言ってた…。
私以外にも森をさまよってきた人がいるということなのか……。
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