☆君との約束
「……春馬が優しすぎるって言うのもあると思う。でも、やっぱり、唯一の女だからね。誰も、何も言えない。それだけ、貴重なんだよ。御園の女は」
「…………春馬さんが可哀想な気がする」
「うん。和子が何を考えているかなんて、もう、誰にもわからないよ。分かるのは……本人だけだし」
諦めているといえば、聞こえがいい。
一言で言うのなら、俺達は逃げているだけ。
弟を犠牲にして……非情だと思われるだろうか?
でも、それが事実だから。
「莉華さんを、守るんだもんね。陽向さんは」
「……」
「良いと思うよ。全力で愛して、守ってあげてよ。そうしたらきっと、彼女達は幸せでいられるんだと思う」
久貴は愛しそうに自身の薬指にある指輪を撫でて、
「見て、俺の嫁さん、変なの」
と、見せてくれる。
刻まれた、英文。
「If you are okay!(貴方なら、大丈夫!)……面白いな、お前の嫁さんは」
「でしょ?……でもね、これでも、毎日、救われてるよ。人を救えないかもしれない時、疲れた時、立てなくなった時、彼女が守ってくれているみたいで」
安心するんだ、と、彼はそれに口付ける。
久貴のあれだけ大切にしていた恋人。
俺たちと出会った年、すぐに入籍したらしいが、そんな恋人は身体が弱く、病を患っていて。
四年前、久貴が今、とても大事にしている息子と引き換えにして、彼女はこの世を去った。
まだ、23歳という若さで。