かけがえのない人


うしろからまた歩いてくる音がした。

「愛結、ごめんな。勝手なことをして。過去を忘れられないから愛結は苦しんでるのにな。愛結は過去ともちゃんと向き合ってるのにな。久々に帰ってきて、愛結のこと悲しませちゃうなんて最低な父親だな」

「お父さん・・わたしこそさっきはどなっちゃってごめんなさい。お父さんが悪いわけじゃないよ。全部昔の自分がしたことだから。でも、この本だけは捨てられないの。いつか、ちゃんと返したいの。彩香に」

「そう、か。それならお父さんは何もいえないな。愛結がしたいこと、やりたいことをやればいい」

やっぱりいつも私の味方でいてくれる。

「うん、ありがとう。ごめんね、これせっかくしばったのに全部切っちゃって」

「いいわよ、お母さんとお父さんでやるから。愛結はもう遅いからお風呂に入って寝なさい」

だまってわたしとお父さんのやりとりを聞いていたお母さんがそういった。

「うん、わかった。おやすみなさい」

「おやすみ」


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