背徳の王太子と密やかな蜜月
「……なあ、いつも一人で行動しているなら、俺と組まないか?」
イザベルのもともと大きな瞳が、さらに大きく見開かれる。
「女ひとりじゃ、色々不自由もあるだろう。何より戦力が二つになるから、今まで手を出せなかった大勢の賊を相手にすることもできる」
「アロンソ……いいの?」
遠慮がちに尋ねつつ、けれど彼女もそれを望んでいたかのように、期待に満ちた眼差しでアロンソを見る。
「ああ。ただし、足手まといになるなよ?」
「ありがとう!」
感激したイザベルは、丸太に並んで座っていたアロンソにぎゅっと抱きついた。
「……大袈裟だな」
呆れて苦笑をもらしつつ、アロンソはわずかに乱れる自分の鼓動を聞いた。
先ほど、彼女を妹分だと思ったばかりだったが、二の腕辺りに当たるやわらかな感触を、どうしても意識してしまう。
(あまり無防備だと困るな……いろいろと)
仲間を得て心強い反面、アロンソはそんなことを思い、内心ため息をついた。
しかし、イザベルは無邪気に笑っていて、アロンソもつられるようにして、小さく微笑んだ。彼が笑顔になったのは、久しぶりのことだった。
この夜を境に、二人の共同生活は幕を開けたのだった。