背徳の王太子と密やかな蜜月
今日も庭を駆け回るかのごとく、イザベルは自由気ままに森を進んでいたが、ふいに水のせせらぎが聞こえた気がして足を止めた。ぴたりと静止した状態で耳を澄ませ、音のする方向を探る。
「……あっちだわ」
小さく呟いたイザベルは、自然と早足になりながら、水辺へと近づいていく。
木々の間をぬって、最後に顔の大きさほどある大きな葉を避けてひらけた場所に出ると、そこには初めて見る美しい泉があった。
「きれい……」
思わず感嘆の声を漏らし、イザベルは岸辺に近づいていく。薄く緑がかった青色の水は透明度が高く、底に沈む倒木や揺れる水草、色とりどりの小魚が群れをなす姿までハッキリ見えるほどだ。
イザベルはその美しさにしばし心を奪われ、ぼんやり立ち尽くす。
「イザベル?」
しばらくすると、泉の方から聞き覚えのある低い声がして、イザベルは我に返る。顔を上げた先には、裸の状態で腰まで泉に浸かっている、アロンソの姿があった。
「アロンソ! こんな場所にいたの?」
「ああ……お前がなかなか起きてこないから、水浴びでもしようかと思って」