花咲かじいさんの戯言
序章:枯れ木に花を
枯れ木に、灰をかけてみたことがある。



俺がまだ小学生のころ、『ダイオキシン』なんて言う、環境ホルモンは話題にも上らず、

学校の焼却炉は元気に活動していた。



その焼却炉が、失業を迎える数年前の冬、灰を集めて木に振り掛けた。



当然、桜の花が咲くことはなく、代わりに下を歩いていた教頭の寒そうな頭頂部を覆い隠した。


教頭の説教は1時間に及び、最後に彼はこう言った。


「灰は、根の周りに撒くものだ。そうやって栄養になるんだよ。」


その春、その木には、美しい桜が咲き誇っていた。


その時、漠然と感じたことがある。


『完成』に必要なのは、『奇跡』ではなくて、『栄養』なのだ。



「おーい!一馬、外でサッカーしようぜ!!」

「いや、俺、勉強するから!!立派な人間になるために!!」


「はぁ?」


自分を培うために、知識を吸収して、吸収して…


環境問題とかうるさくなって、ゴミの分別がいっそう厳しくなた頃、


俺は、つまらない人間になっていった…。





< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ヒーローの缶詰
翁真/著

総文字数/4,896

青春・友情14ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『貴様のヒーローはなんだ!』 憧れたもの、 それはいつだって、 僕の最上の人。 僕だって、変身して、 いつかヒーローになりたいんだ… 『いいから、さっさと降りてきてご飯食べなさい!!』 「はいよー。母ちゃん。」 *男には、心にヒーローがいるもんだ。
椿山亜季人の苦難日記
翁真/著

総文字数/60,179

恋愛(その他)169ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
このお話は、高校3年の、脱力系男子・椿山亜季人と、なぜかワラワラ集まってくる友人達の恋愛模様を綴ったものです。 屋上は、心地よい。…誰も来ないならね。 俺の所には、うるっさい二人がやってくる。恋やら成績やら、なにか悩みを溜め込んで。 きいてくれますか、常識人の皆さん! ちょっと笑える、恋のお話… *5/8:完結
お猫様の言うとおり
翁真/著

総文字数/15,663

恋愛(その他)42ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
―それは、たぶん、 あの猫のいたずらだ…― ふかふかとしたあの温もりが 君の愛情のようだった *不器用な男と、深い愛情の物語 *2008/5/6:完結

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop