死の代償
 次に目を覚ましたとき、美雪は病院のベッドの上にいた。

 最初に視覚を刺激したのは、白のイメージだった。

 そして、焦点が急激に合い、白い病室の天井が映った。

 ずいぶん味気無い天井だなとぼんやり考えていると、

横から自分の名を呼ぶ声がして、誰かが顔を覗き込んできた。

 声も顔も見覚えがあった。

 母親だ。

「あれ?お母さん」

 真っ赤に腫れた目を潤ませて母親が、美雪の右手を握って名を呼んだ。

 はて?なにをお母さんは泣いているのだろう。

 ここはどこだろう。

 家じゃないな。

 あたしはどうしてこんなとこにいるのだろう。

 次々と疑問が湧き出てきて、美雪の頭の中は混乱した。

 やがて医師がやって来て美雪に問診を始めた。

そして美雪が、自分がなぜここにいるのか覚えていないのが判ると、

医師は、なにが起こったのかを話した。

「あたしが自殺?大量失血で意識不明だった?それから四日経ってる?」

 そして、医師はさらに尋ねた。医師というより彼は、自殺志願者担当のカウンセラーらしい。

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