死の代償
 10年後、美雪は結婚していた。

 そして、妊娠し、いよいよ出産だった。

 だが、それは難産だった。

 出産のときが近付くにつれ、母体の危険が高まった。

 やがて出産、元気な男の子が生まれたが、それと引き替えのように、美雪は昏睡状態に陥り、そして……

「お久しぶりです」

 そう声を掛けられて、美雪はゆっくりと振り向いた。

 そこに、悪魔がいた。

 なぜだか知らないが、それが悪魔であると美雪は知っていた。

 なぜだろう。

 それにここは……ああ、実家にいたときのあたしの部屋だ。

 今は物置になってるはずで、この配置は高校の頃のだ。

 確か、そう、10年前の……

「そうです。あなたがわたくしと初めて会ったときと同じ部屋です。

今度は本来のわたくしの仕事をしに参りました」

 悪魔は丁寧にお辞儀した。

 初めて会った?本来の仕事?

「ああ、そうか。じゃあ、あたしは死んだのね」

 ゆっくりと記憶の扉の一つが開き、美雪はすべてを思い出した。


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