イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 稽古終了後、いつものように後片付けをして教室を出る。

 全て終わったことを報告するため、葛城先生をはじめ先生方がいらっしゃる控室に行こうと教室を出た。


「あら、藤沢さん?」

 聞いた声だな、と思って振り返ると、なんと着物姿の松原さんが立っていた。

「松原さん! こんにちは。お久しぶりです」

 松原さんと会うのは『ルトロワ』のパーティー以来。体調を崩して挨拶もそこそこにショップを出てしまったことを思い出し、私はまずその時のことを謝った。

「着替えまで用意していただいて、ありがとうございました」

「いいのよ。羽根木くんがお買い上げしてくれて、私はラッキー」

 そう言って着物の袖を抑え、お茶目にピースサインを作る。


「ところで今日はどうされたんですか?」


 今日の松原さんは、桜を散らした可憐な江戸小紋を着ている。髪も綺麗に結い上げ、清潔感のある襟足に爽やかな色気が漂っている。

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