イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「日程はお決まりですか?」

「うん、実は、今日これから」

「今日ですね。えっ、今日!?」

 驚いてガバッと顔を上げると、智明さんは口に手を当て肩を揺すっている。

「結月、目がまんまるだよ」と言うと、堪えきれなかったのか、行儀悪くプッと吹き出した。


「ここを逃すと、当分時間が取れそうにないんだ。葛城なら先に許可を取ってるから大丈夫だよ」

「ええっ、でも……」

 突然のことにあたふたとする私を見て、智明さんがまたくつくつと笑う。

 それに今から出かけたら、今日中に東京に戻るのって結構ハードなんじゃないかな。


「だって、出張に出るなら、それなりに準備もありますし……。そうだ、新幹線のチケットは?」

「それはもう手配済み。ごめん結月、出発まであまり時間がないんだ。タクシー呼んであるから、今すぐ行こう」

「えっ、ちょっと智明さん!?」

 尻込みする私を無理やり立たせると、智明さんは右手で私の手を、左手で私の鞄を掴む。

「いいから、行くよ」

 普段見せないような強引さで、智明さんは私を香月流の本部から連れ出した。


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