独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

――翌日。

「はぁ……」

　彼女から言われた言葉を何度も何度も頭の中で繰り返し、俺はあれからずっともぬけの殻のようになっている。

「社長、聞いていらっしゃいましたか？」
「え？」

　秘書の山口に声をかけられて、現実に引き戻された。
　数ヵ月前から取り組んでいるプロジェクトの件で、今夜は重要人物と会うことになっている。
　その予定の確認をされていたのだが、全く聞いていなかった。

「悪い、聞いていなかった」
「では、もう一度確認いたしますね」
「ああ、頼む」

　昨夜はあれから、レストランで食事を済ませたが、お互いに冷静になろうと提案して彼女を実家へと送り届けた。
　詩織のことが大切で、こんなにも好きなのに、どうしてうまく伝えられないのだろう。

　なるべく彼女の負担にならない程度にしか出さないようにしているから？