朱莉さんの不可解な一週間
そう言って先生が再び見回す店内は外観同様超レトロで、壁に貼られてるおしながきの紙は日焼けして茶色くなってる。


テーブルも一応拭いてはあるものの、何の油か分かんないものでベタベタしてて、椅子はちょっと体勢を変えただけでギィギィ鳴る。


――それでも。


「ああいう店よりこういう店の方が好きなの」

ああいう店より全然いい。


無理矢理8時に待ち合わせを取り付けた先生が、悩みに悩んだ末に待ち合わせ時間から5分遅れて駅に行ったあたしを連れて行こうとしたのは、ちょっと高級なイタリアンレストランだった。


駅前のビルにそういう店があるっていうのだけは知ってたけど、行った事もないその店に行ってみたいと思った事はない。
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