目覚めたら、社長と結婚してました
 そこで彼女の顔はぱっと明るくなる。

「でも、素敵なご主人がいらっしゃるから大丈夫ですね。大きな心配はないと電話でもお伝えしてたんですが、『すぐに向かいます』と迷いなく答えてくださってね。病院にいらしたときも、心配で飛んできたって顔でしたよ」

 内緒話でもするかのように告げられた看護師さんの言葉に、私の頬は赤くなった。

 怜二さん、病室に来たときはなんでもないって顔してたくせに。そっか。私のこと心配してくれたんだ。当たり前といえば当たり前なのかもしれない。夫婦だし。

 でもそんなことで愛されているんだな、と実感する。それと同時に心配かけて申し訳なかったな。

 さらには記憶まで失っちゃったし。とりあえず今は頭に異常は見られず、体も元気だということを喜ぼう。

 病院を後にして伯母とランチをしてからマンションに戻ると、玄関に怜二さんの靴があり驚いた。

「どうされました?」

「検査結果はどうだった?」

 リビングで顔を合わせ、お互いの声が重なる。どうやら怜二さんは私のことを気にかけてくれたらしい。見ればスーツ姿で今帰ったばかりのようだ。

「異常なしでした。記憶に関しては、ふとした瞬間に思い出すかもしれないけれど、こればかりは先生もわからないって」

「頭や体に異常がないなら上等だろ」

 ぶっきらぼうに告げられながらも、私はにやけそうになるのを必死に堪える。そして彼のそばに歩み寄りそっと身を寄せた。
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