目覚めたら、社長と結婚してました
提案です、今から愛を語らい合ってみませんか
「柚花」

 彼の低い声で名前を呼ばれ私は目を開けた。何度か瞬きを繰り返し、夢と現実との狭間で揺れ動く意識を覚醒させる。

「大丈夫か?」

 心配そうな怜二さんの声を受け、私は無意識に自分の目を擦った。すると自分の手が濡れて、涙を流していたことに気づく。

「また怖い夢でも見たのか?」

 なんとか状況を理解して思い出す。怜二さんと気持ちを確認しあってから、たくさんキスを交わしてどことなく気恥ずかしい気持ちになりながらもふたりで夕飯を食べて、いつも以上にたくさん話をした。

 お風呂に入り寝支度を整えたところで、私は今になって彼と同じベッドに向かうことをすごく緊張してしまった。

 私が意識し過ぎなのは怜二さんにバレバレだったらしい。お互いに好きな本を読むことになり、私は昼に怜二さんからもらった本の続きを読んでいた。

 しかし、いつのまにか夢の中に旅立っていたらしい。

 怜二さんもベッドに横になっていて、私と目を合わせるとそっと顔にかかっている髪を耳にかけてくれた。どうやら彼も寝ようとしていたみたい。

「平気、です。今、何時ですか?」

「午前零時過ぎたところだ」

 また半端な時間に眠ってしまった。でも、私の気持ちはどこか満たされていた。

 穏やかな明かりに包まれた寝室で、怜二さんの顔ははっきりわかるほど私たちは近くにいる。ふっと笑みがこぼれ、私は手を伸ばして怜二さんに抱きついた。
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