目覚めたら、社長と結婚してました
 どうやら似ているのは内容だけではないらしい。彼女がリストを作った意味さえも小説のヒロインと同じとは。

 彼女は全部、結婚するのを前提に動いていたのか。

「べつに、あいつが自分で決めて結婚しようとしているなら、こっちが余計なことをしたり、口を挟む必要はないでしょ」

 なにも間違ったことは言っていない。本当に結婚が嫌なら、そういう素振りくらい見せているだろ。彼女はそんなことはしなかった。

 導き出した結論を口にし島田さんと近藤さんのふたりの視線が一気にこちらを向く。島田さんは眉をひそめ、近藤さんは肩を落としている。

「前は冗談で言ったけど今は本気で思う。お前、マーティンにそっくりだな」

「は?」

 急な例えに意味が理解できない。反射的に聞き返すと近藤さんはやれやれと首を振った。そして口を開いたのは島田さんの方だった。

「怜二、お前煙草どうしたんだよ。ここ最近、吸ってないだろ」

 なにげない問いかけに俺は言葉に詰まった。元々たまにしか煙草は吸わないが、ここで吸うのは定番だった。最近は島田さんの指摘するように吸ってはいない。

 明確な理由はとくにない。ただ……。

『煙草くさいです。なんですか、嫌がらせですか!?』

 『煙草もギャンブルもしない』なんてリストに挙げておきながら、普段ここで吸うときに文句のひとつも言ってこない。
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