目覚めたら、社長と結婚してました
 暇だな。

 伯母の家にお世話になって早三日。カレンダーをちらりと確認すると今日は金曜日。家の中でずっと閉じこもっていると、曜日感覚がなくなる。

 仕事に関しては、年内いっぱいは休めることになった。それがいいのか、悪いのか。記憶がないこと以外は元気なのだから、どうしたって時間を持て余してしまう。

 とはいえ突然の眠気に襲われることもあるので、体調が万全というわけでもないし。眠ったのに目覚めたときは悪酔いした気分だ。

 記憶がジェットコースターのように頭の中を駆け巡って、膨大な情報が脳を錯綜しているのに、はっきりと覚えているものとしてはなにも蘇らない。

 おかげで本を読んでもすぐに疲れてしまい、続きを早く読みたい私としてはフラストレーションも溜まってしまう。

 体を起こして、大きく息を吐き時計を見る。もうすぐお昼時だ。

 そこで私はある考えに思い至った。伯母に出かけることを伝え、必要なものをもって家を飛び出した。

 目指すのは会社方面だ。冷たい風に肩をすくめる。太陽は昇っているものの雲に隠れてあまり気温も上がっていないうえ、どこか薄暗い。

 気を取り直して私は駅まで歩き出した。お目当ては会社近くにあるお気に入りのパン屋さんだ。

 フランス系統のパンに力を入れていて、その味は現地での雑誌でも紹介されたほどだ。母が喜々として雑誌の記事を送ってくれた。

 パリのシャンゼレゼ通りに並んでいるかのようなお洒落で広々とした店内は、白を基調に天井が高くディスプレイにもこだわっている。
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