Some Day ~夢に向かって~
時、来たる
それから、あっという間に七草が過ぎて、3学期の始業式。


「由夏、加奈、久しぶり~。」


「悠、元気だった?」


「もう、私達のことなんか、すっかりお見限りだもんねぇ~。」


「もう、由夏、そんな言い方しないで。」


久しぶりに会った親友にちょっと皮肉を言われてしまったけど、まずは再会を喜んだ。でも私達にとって、高校最後の始業式はまさに顔合わせだけ。明日からは自由登校になって、また受験モ-ド一色の日々だ。


そして2週間後、やって来たセンタ-試験。私達の大学受験はいよいよ本番を迎えた。


「どうだった?」


2日間の試験を終えて、会場を出ながら、私は2人の親友に問い掛けた。


「うん、まぁまぁかな。」


と答えたのは加奈。国立大からキャリア官僚の道を真剣に目指している彼女にしてみれば、こんなところで、躓いてはいられないというところなのだろう。


「ま、こんなもんでしょう。」


一方、私や由夏のような私大志望者にとっては、腕試しの側面も強いセンタ-試験。徹くんのように見向きもしない人もいるように、本番は下旬から始まる各校の一般入試ということになる。


センタ-試験が終わると、また孤独な受験勉強の日々が続く。親友達とはもちろん、徹くんとのホットラインも滞りがちになって来た、ある日。


予備校以外の外出は、ほぼ皆無となっていた私が、久しぶりに学校に顔を出したあと、ちょっとした買い物があって、駅の方に向かっていると、後ろから声を掛けられた。


「悠ちゃん。」


「あっ、みどりさん。」


振り返ると、相変わらず笑顔の素敵な、みどりさんだ。


「奇遇だね、こんな所で。」


「はい、ちょっと買い物があって。これから大学ですか?」


「うん。どう?勉強の方は。」


「はい、なんとかですかね。」


「M大だっけ?本命は。悠ちゃんならイケると思うから、頑張ってね。」


「ありがとうございます。」


ここで、私はずっと気になっていることを、みどりさんに尋ねた。


「徹くん、どんな感じですか?」


「うん・・・頑張ってるけどね・・・。」


みどりさんは複雑そうな表情を浮かべる。


「厳しい、ですか・・・?」


「正直、時間が足りない・・・かな。」


「みどりさん・・・。」
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