Some Day ~夢に向かって~
「松本省吾という野球選手が、どれだけの期待や注目を集めてるプレ-ヤ-なのか、私はちゃんと理解してるつもりだったけど、高校生として史上最多の8球団の競合の末に、Gに1位指名された、あのドラフト会議以降のことは、私の想像の範疇を全く超えてた。」


「・・・。」


「学校の登下校も一緒に出来なくなっちゃうような状況のまま、私達は離れてしまった。彼の情報はマスコミからいっぱい流れて来るのに、会うことはもちろん、電話連絡も、LINEでさえ、1日遅れの返信なんかザラ。松本くんに会えないことが辛くて、どんどん遠い存在になって行くことが、耐えられなくて、でもどうすることもできなくて・・・いつしか、私達の連絡は全く途絶えてしまった。」


「そんな・・・。」


学内で誰もが羨むベストカップルだった松本先輩とみどりさんが、そんなことになってたなんて。


「夏休みに入っても、なにもする気が起きなくて、家に閉じこもってるような毎日を送っていた私の前に、1年ぶりに帰ってきたんだよ、白鳥くんが。」


徹くん・・・。


「突然、私の家に現れて、言葉も出ないくらいに驚いてる私に白鳥くんは、挨拶も抜きに『これから東京ドームに行くぞって』って言うと、有無も言わさずに私を連れ出した。」


「本当にドームに行ったんですか?」


「うん。その途中で言われちゃった。『バカだな、君達は。今の君達は、会うのは確かになかなか難しいかもしれない。でも連絡取る方法、声聞く方法なんて、いくらでもあるじゃん。例えスレ違いになって、タイムリーじゃなくても、そんなことにめげててどうするんだよ。その挙げ句につまんない意地張って、誰が得するんだよ。さぁ、松本にLINE入れてやれよ。これからドーム行くからって。きっとあいつはこう返信してくるよ、待ってるよ、どこにいても、必ず見つけるからって。』そして、少し経って、彼から本当にそう返信が来た時、私は涙が出るくらい嬉しかった。」


「そうだったんですか・・・。」


「悠ちゃん、あなたの恋人はこういう人。だから離れたって大丈夫。1人で勝手にベラベラしゃべっちゃったけど、今日はそれを伝えたくて。」


「みどりさん・・・。」


「一緒に居たって、ダメになるカップルは一杯いるし、距離じゃないよ。なんて、私が言っても、説得力ないかもしれないけど。あともう1つ、どんな状況でも連絡だけは、絶やさないでね。これは自分達の苦い経験からの忠告。」


「はい、ありがとうございます。わざわざ私達の為に・・・。」


感謝の気持ちで一杯の私に、みどりさんは言う。


「なかなか難しいと思うけど、そのうち悠ちゃん達とダブルデ-トしたいな。なんか凄く楽しそう。」


「はい、是非お願いします。徹くんにも伝えておきます。」


そう言うと私達は、笑顔を交わした。
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