Some Day ~夢に向かって~
その夜、夕飯を食べ終わって、自分の部屋に戻った私は、携帯を手に取った。昨日の返事を先輩にする為に。


携帯を耳に当ててツーコールで、先輩の声が飛び込んで来た。


『もしもし、水木?』


「はい、先輩出るの早いですね。」


『そうかな?』


まるで待ち構えてたみたい、と思ったけど、口には出さずに本題に入る。


「ところで、昨日のお話しなんですけど・・・。」


『うん。』


「先輩に勉強教えるなんて、私には無理です、ごめんなさい。」


『そっか・・・。』


私の返事に落胆する、先輩の様子が携帯からも伝わって来る。


「教えるなんて、とてもおこがましくて、出来ませんけど、せっかくだから、一緒に勉強しませんか?」


『いいのか?』


「はい。先輩、放課後よく図書室行ってるんですよね?だったら、明日から私も一緒に行きます。」


『ホントか?』


「塾ある時は、そのまま一緒に行けますし。」


『うん。』


「じゃ、明日からよろしくお願いします。」


『こちらこそ。』


名残惜しかったけど、電話を切る。また明日だ。


あれ?あんなにもやもやしてたのに、私結局、先輩と一緒にいられる時間が増えることを喜んじゃってるみたい。あくまで勉強が目的、のはずなのに不謹慎かな?ま、いいか・・・。


そう言えば先輩の声も、ちょっと弾んでたように聞こえたのは、気のせいかな?


「水木、ごめんな。こんな優柔不断な男に振り回されてるのに・・・優しいな、お前は・・・。」


なんて先輩が独り言ちてることなんか、私は知る由もなかったから。
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