幼馴染みと、恋とか愛とか
そんな感じで五階の応接室へ通されてる私は、電話対応をしてくれた柴原さんに、「社長の手が空くまでお待ち下さい」と言われ、「それまで会社のパンフレットでも読んでいて下さい」と冊子を手渡されたんだが、そんな物を見るような余裕もなく、早く社長が来ないだろうか…とそわそわしながら部屋の中を見回していた。


応接室の中は殺風景で、自分が今腰掛けているソファセット以外は、観葉植物の鉢が一つとキャビネット棚が一つある程度。

他には無駄なものは一切なく、ソファセットの下に毛足の短いカーペットが一枚、敷かれてあるくらいだった。



「まだかなぁ」


紫苑を介して斡旋されたというのに(待たせるというのは何事!?)と無駄にイラついてきてしまう。

仕様がないからこのパンフレットでも見るか…と手に取ったところで、急にノックもなくドアの開く音がして、ギクッ!と肩を飛び上がらせて立ち上がり、ビクビクしながらドアの方へと振り返った。


そこにはダーク系のスーツを着た相手がドアを閉めるのが見え、(この人が社長?)と目を丸くしながら見据えたんだが……



「…あれ?どうして紫苑が此処にいるの?」


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