幼馴染みと、恋とか愛とか
そう思うと歯痒いけど、実際のところはそうだ。

紫苑は昔から私が弱ったり困ったりした時はタイミング良く現れて、アッサリと事を解決してくれることがある。

勿論それは単なる偶然で、私が予め彼に助けを求めたりしてる訳じゃない。

でも、だからこそ親達には救世主みたいに思われてて……


(……でも、昨夜のあれは何だったの?)


部屋のドアを開けて室内に入り、ベッドに潜り込みながら思う。
頭の中では紫苑が冗談のように囁いた言葉を思い出して、やっぱりどうかしてる…と考えた。


(紫苑は単純に私を揶揄ったのよ。妹みたいに面倒を見ろと言われてきたから、酔った勢いで冗談を言っただけ)


幼馴染みで色々と知ってる仲なのに付き合う?
恋とか愛とか、そんな色っぽい関係にもなれないのに?


(ないない。そういうの)


もう一度全否定してうつ伏せる。

それでも胸の中には紫苑がカウンターチェアに座った時の安心感が思い出され、自分でも妙だなと感じた___。

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月曜日のオフィスはそれなりに忙しい。
何処も同じだと思うが、紫苑のオフィスは特に、だと思った。



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