わたしと専務のナイショの話
 だが――

 ああ、いかんいかん、と思う。

 このままでは、自分の妻をこっそり覗いている変質者だ。

 気配を消していた京平が立ち上がろうとした、そのとき、のぞみがふと振り向いた。

 わっ、と声を上げる。

「せ、専務。
 起きてたんですか……」

 専務はよせ、専務は、と思いながら、側に行き、のぞみを見下ろすと、
「少し腹が減ったな。
 なにか食べに行くか?」
と訊いた。

「あ、はいっ」
と笑顔で言うのぞみに、

「……今日から、お前がおごれよ」
と言うと、

「ええっ?」
とのぞみは叫ぶ。

 京平は一度奥の部屋に戻り、通帳を五冊とカードと印鑑を取ってきた。

 のぞみに渡す。

「うちの全財産だ。
 今日から、お前が管理しろ」

「きっ、緊張しますっ」
と硬い様子でのぞみは通帳を受け取っている。
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