世界で一番優しい嘘〜短編集〜

「カオルくん!」

私は放課後、カオル君に声をかけてみる。

その時、水沢さんはいなかった。

「今日、帰り、お茶でもしていかない?」

「あ、ごめん・・・

今日はちょっと用事が」

用事?

それって・・・水沢さんと?

「そっか

それじゃあ仕方ないね。

あのね、greentea(グリーンティー)のお店、新作の紅茶が出たみたいだったから」

「あ、そうなの?

じゃあまた今度、僕と行こう」

・・・僕と行こう・・・。

誘ってくれた。

本当にカオルくんはとても優しい。

「うん、ありがとう」

「すみませんが、早く掃除を終わらせてしまいたいので、教室から出て頂けますか?」

「え・・・っあ、ごめんなさい・・・っ」

目の前には黒髪美人の女の子。

学院でも有名な美少女、聖莉葵(セリア)さんがたっていた。

間近で初めて見たけど、とても綺麗な人だった。

腰まであるストレートな髪の毛・・・。

私、くせっ毛だなぁ・・・。

カオルくんも聖莉葵さんみたいな子が好みなのかなぁ・・・。

「美嘉?

どうかした?」

「あ、ううん全然」


玄関に来るとカオルくんは私に手を振った。

・・・バイバイ・・・。

私は帰ろうと踵をかえす。

「待った?カオル」

「いや大丈夫」

「ねぇねぇ、今日どっか寄って帰ろ〜

ゲーセンとか?」

・・・やっぱり水沢さん。

いいなぁ・・・。

カオルくんの・・・特別、なのかなぁ。

私はどうしたら誰かの特別になれるんだろう。

そんなことを考えていたら、声がした。

とても透き通った声が。

「何か悩み事かい?」

・・・え・・・。

驚いた私は、口を開け、目を大きく見開いてしまう。

ここ、薔薇の綺麗な洋館・・・。

有名な薔薇の綺麗なーーー。

薔薇の綺麗な洋館でよく見かけるエメラルドのワンピースを身につけ、茶色い髪には青色の大きなリボンを後につけている。

通称、洋館のお嬢様レイチェルと呼ばれていたが、本名は皆知らなかった。

「私はミサト。」

「あ・・・」

私は見とれていた。

ただただ彼女に見とれていた。

「貴女は?」

「わた、私は・・・赤城美嘉・・・」

「美嘉・・・?

いいお名前ね?」

そう言って彼女は、笑う。

風で茶色い髪がかすかに揺れていた。

笑う時、彼女は手を口の前にやる。

そんな一つ一つの仕草が彼女の上品さを表していた。
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