気まぐれ悪魔に魅せられて


あの後、部屋に戻ってしばらく話して分かったこと。


叶にいと浅川さんは塾での知り合いで、今日は二人で帰っている時に颯人くんから連絡があり、せっかくだからということで合流することになったらしい。まぁ知らない間柄の浅川さんと颯人くんが合う流れになったのはきっと、叶にいがお互いの話をお互いにしていたからだろう。そして、話しているということは、やっぱり叶にいは浅川さんのことが残念ながら好きなのだろう。


ここで残念ながらとか言っちゃうあたり、自分の了見の狭さを自覚する。するけど、だけど、自分の好きな人に好きな人がいることを喜ばしいと思う人はいない気がするから、仕方ない。


疲れたな…明日も学校とか、サボりたい。
初日から早くも心が折れながら寝る間際に携帯をチェックしたら颯人くんからメールが2件。


“今日叶斗忙しいみたいだからなしにしよっか”


これが、私が叶にいの家に着く前のやつで、


“ごめん、香緒ちゃん大丈夫?”


こっちが解散した後のやつ。


この人にも大概気使わせてるよな、そう苦笑いしながら“大丈夫だよ、ありがとう”と返信しておいた。


この大丈夫は意地になった強がりじゃない。浅川さんのこと、気にしてないと言ったら嘘になるし本当はめちゃくちゃ気になるけれど。だけど、ちょっとだけ叶にいの視界に入れたから。今はただその言葉だけで、これからも頑張っていこうと思えるから。


これは私にとって精一杯の、だけど必要な強がりだと思うんだ。
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