彼の隣で乾杯を
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2年前、私は海外企業との新規取引の大きな契約を取ることに成功した。

偶然、そこの御曹司と出会ったのは確かに夜のホテルのラウンジだったし、その時彼にナンパされたのも間違いじゃない。

でも、彼と契約の話をしたのは決してベッドの上じゃない。

私はプライベートのお誘いを断り、翌日改めてアポを取って彼の会社を訪問し彼と彼の部下にビジネスの話を聞いてもらったのだ。その後も何度も彼の会社に通って様々な提案をした。
私はまっとうな形で営業をして契約にこぎつけたのだ。恥じることなど何もない。

でも、一部の社員たちからあれは枕営業して取った契約だと陰口を叩かれていた。

ホテルのラウンジで知り合ったのは事実だけど、御曹司の彼とはそんな関係じゃない。
彼は陽気なイケメンイタリア人で私も目立つ存在だったから噂が勝手にひとり歩きしたのだろうことはわかっている。

以前から女子社員からよく思われていないことは知っていた。
学生時代もそうだったし。私は派手な顔立ちをしているせいか女性に敵視されることが多い。
おまけに媚びたり愛想笑いも苦手。女性特有のグループ派閥みたいなものは完全に無視している。

普段から何を言われても面倒なので反論もせず黙っているのもよくないのかもしれない。
でも、私の仕事を正当に評価してくれる上司がいて本当の私のことをわかってくれる友達がいればそれでいいと思っていたから、くだらない噂話に振り回されるのは時間の無駄だと思っていたのだ。


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