彼の隣で乾杯を
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「谷口と康史さんは毎日楽しそうにしてる」

それから高橋から聞いた早希と副社長の様子も私を安心させるものでしかなかった。
早希から届くメールからも彼女の幸せな様子が伝わってくる。

早希は大丈夫だ。

早希は幸せを掴もうとしている。
私も嬉しいと思う気持ちと同時に寂しさを覚えている。
高橋が自分の父親が経営するTHコーポレーションに行ってしまってからはや3週間。
あれから私たちは全く会えていない。

お互い時間が合わないといえばそれまでだけど、私は遠距離恋愛に向いていないのかもしれない。
メールや電話では埋められない寂しさ、今週は特にそればかりを感じていた。


「佐本さん、体調悪いんですか?先週も出張だったしあんまり休めてないんじゃ」
菊地ちゃんが私の顔を覗きこむ。

「ううん、大丈夫。ちょっと疲れてはいるけど」
「じゃあ、もしかして彼氏とうまくいってないとか?」

「え?」

菊地ちゃんはからかう口調だったのに、何故か動揺して声が裏返ってしまった。

「やだ、冗談ですよ。って、え?まさか?」
青ざめる菊地ちゃん。

「ああ、違う、違う。うまくいってないとかじゃないの。心配とか不安じゃなくて。しばらくお互いに忙しくて会えてなくてね、寂しいってだけなの」
はぁっとため息まで出てしまった。

ドサッドサッ
ガチャン
ガタン
うおおっ

大きな音がして振り返ると、隣の席の石田さんが手に持っていたらしいファイルとブリーフケースを床に落とし、後ろの席の東くんがマグカップを倒していた。斜め後ろでは八木さんが脚にデスクチェアーを引っ掛けてしまったらしく痛がっている。久保君は口を開けて固まっていた。

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