彼の隣で乾杯を

***

「佐本さん!早希の居場所を知らないか?いないんだ、どこにも。頼む、教えてくれ」

残業中のオフィスの私のデスクに押しかけてきたその男ーーー我が社の広告塔でもあるイケメン副社長の顔は真っ青だった。

私の所属する海外事業部のフロアはいきなり雲の上の存在のイケメン副社長が現れてざわめき立った。
カナダ支社の役員と電話中だった私も危うく受話器を落としそうになってしまったほどだ。

このオトコは女子社員のほとんどがその姿にうっとりと見とれその口からはため息が漏れてしまうという類まれな美貌を持つオトコだ。おまけに当然ながら地位も金もある。

過去にモデルをしていただけに抜群のルックス。有名なコレクションのモデルをしていたとか。
そんな社内一の独身イケメン御曹司が私のところに駆け寄ってきた姿を見て頭がくらっとして倒れそうになる。
もちろん嬉しいとは全く反対の意味で。

女子社員に妬まれるからホントにやめて欲しい。

副社長、私と初対面ですよね?
昨夜電話でちょっとだけ話しましたけど、ほぼほぼファーストコンタクトですよね?

そもそも今コイツなんて言った?

私の大親友の早希がいなくなった?

嘘でしょ?

アンタ、昨日の夜の電話で私に何て言ったんだ。
”絶対に傷つけないから話をさせて欲しい”って言わなかったか?

くそ、イケメンだからって、副社長だからって、ふざけんなっ。
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