彼の隣で乾杯を

イタリア出張

早希はやっぱり実家にいた。

早希がいなくなる前にお母さんがヘルニアの手術を受けたってことは聞いていたけれど、それだけじゃなくてお姉さんのご主人が突然亡くなって幼い二人の甥姪が残されていること、お父さんは海外で単身赴任をしているとを聞いて改めて実家の事情があったことを知った。

副社長との関係、なぜいなくなったのかはまだ話す気がないらしい。
ただ、こちらの現状だけは教えておいた。副社長が早希を探している、と。

「私のことは教えないでね」

それはもちろんだ。
副社長に教えたことでまた私が早希に連絡を絶たれてしまったとしたらもう耐えられない。


「ホントに心配したんだからね」

「ごめん。ちゃんと話すから、もう少し待ってくれる?」

「わかってる」
「それより、由衣子の方は?何か変わったことない?」

「あったよ。時間ある?何から話そうか」

疲れていた身体が嘘のように軽くなり、気持ちが上向きになる。

私の親友が電話の向こうにいる。繋がっていられるのなら住む場所が多少離れていてもいい。
大事なのはその存在なのだから。



それから私たちは時を忘れて語り合った。
早希の連絡先はわかったし、私たちはまたつながることができた。






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