ストロベリームーン

確かにちょっと異常な感じはしたが、不思議と怖くはなかった。

写真に写っている女の子の目がとても優しかったからかも知れない。

きっとカメラを構えているのは孝哉さん。

「でも、あんな部屋で寝てたらいつまで経っても彼女のことが忘れられないですよ。

やっぱり孝哉さんは新しい人と出会うことを受け入れた方がいいと思います」

「石鹸がないんだけど」

「え?」

 孝哉は水道の蛇口の横を指差す。

 いつも石鹸を置いているところだ。


「あ、今新しいもの持ってきます」

 世那が裏から新しい石鹸を1個持って表に戻ってくると数人の客が入ってきていた。

 時計を見るとちょうどランチタイムが始まる時間だった。

世那が新しい石鹸を出している横で、孝哉は客の注文を手際よくこなしている。

「ありがとうね世那ちゃん、いろいろと」

 孝哉の手元から芳ばしいコーヒーの香りが立ち上る。

 世那は自分は出すぎた真似をしてしまったと少し後悔した。



< 121 / 153 >

この作品をシェア

pagetop