ストロベリームーン

「世那ちゃんのだよ。小春って昔からこけしが好きなんだよな。それにしてもやっぱ小春が選んだだけあって気が強よいな、あーやっぱ女は怖い怖い。璃々子だけだ怖くないのは」

「あんたってシスコンなの?つかこけしってなによ」

「この会話の流れからどうやってそうなるんだよ、こけしはこけしだよ。小春は昔からこけしのフォルムが好きなんだよ」

 今初めて知る真実。

 こけし。

 ずん胴のこけし。

 顔に冷たいものが当たって驚くと、蓮が笑っている。

 指で水を弾いて飛ばしたのだ。

「なんか怖い顔してるからさ」

 世那は腕で顔を拭った。

「小春ってそんなにこけしが好きなの?」

「あ、こけしを気にしてるんだ。別にいいんじゃん、好きになるきっかけはなんでも」

「あんたは璃々子さんのどこが好きなの?」

 蓮はまたか、みたいな顔をした。

「女ってどうしてそんなことばっかり聞きたがるんだろう。璃々子は小春みたいに怖くなくて優しいし、やっぱ髪は短いより長い方がいい、俺、子どもの頃から結婚するなら絶対に小春と正反対な女にするって決めてたんだ」

「やっぱりあんた、シスコンだわ」

「だから違うって言ってるだろ」

「わたしあんたのことずっと誤解してた。理由はともあれ、あんたってちゃんと璃々子さんのことが好きだったんだね。わたしずっとあんたは璃々子さんを利用してるんだと思ってた。ごめんね」

 蓮は驚いた顔をしたが微かに笑みを浮かべると言った。

「そういうの慣れてるから大丈夫」

 皿を洗い終わると水道の蛇口をキュッと締める。

 一連の動きにリズム感があってまるで終了の合図の音のように聞こえる。

 世那は手を洗う孝哉を思い出した。

 蓮の動き全ては孝哉のそれとは違い躍動感があり生き生きとして見えた。

「俺、あっち戻るけどまだここにいんの?」

 蓮は屋上を指差す。

「あ、ううん、わたしも戻る」

 世那は背の高い蓮の後ろをついて屋上に出た。

 テーブルにいる小春が世那を見つけて微笑む。




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