ストロベリームーン

「準備できるまでタバコでも吸って待ってて」

「タバコやめたんだ」

「え?いつから?」

「さっき」

「なんで?」

 蓮は冷蔵庫の方へ歩いていく。

「そういえばさ、さっき近くの公園で大学生くらいの女の子と話してたんだけどさ、音楽なんて趣味でしょって言われちゃった」

 冷蔵庫からオレンジジュースの紙パックを取り出す。

「あ、それもう全部飲んじゃって、新しいの買って来たから。そんなこと言われたんだ」

「まぁそれが一般的な意見だけどね、璃々子何飲む?ビール?」 

「あ、わたしもオレンジジュースでいい」

 璃々子は蓮からジュースの紙パックを受け取りテーブルに置くと蓮の手を握った。

「わたしは蓮くん応援してるからね、わたしは蓮くんがメジャーデビューするの待ってるからね」

 真剣な顔をして蓮を見上げる。

「ありがとう璃々子、璃々子だけだよ、そう言ってくれるの。タバコは声に悪いからやめたんだ。やるからには本気にならないとと思ってさ」

 蓮は璃々子に軽くキスをする。

「わたしも一緒に禁煙する」

「いいよ璃々子は吸ってて」

「だって目の前で吸われると吸いたくなるでしょ」

 蓮は困ったようなでも嬉しそうな顔をした。

「璃々子は本当に優しいね」

 蓮はもう一度璃々子にキスをした。

「さ、食べよ食べよ。いっぱい買ってきたから蓮くんたくさん食べてね」

 4人がけのテーブルに2人は並んで座る。

 カツサンドを頬張る蓮を璃々子は眺める。

「わたし幸せだな、とっても幸せ」

「どうしたの?急に」

 蓮は笑った。 

 璃々子も笑う。

 なんでもない普通の日に特別なんでもない食事を大切な人と取る。

 璃々子にはそれが1番の贅沢に思えた。

「蓮くんはわたしと一緒に居て幸せ?」

「当たり前だよ」

「このままず〜と一緒にいようね」

「そうだね」

 蓮はカツサンドを頬張ったまま答えた。





 蓮と連絡がつかなくなったのはそれからすぐのことだった。 
< 74 / 153 >

この作品をシェア

pagetop