ストロベリームーン

　こののろまの役ただずが！

　が、これ以上粘って変な女の印象をつけてはいけない。

　もうついているかも知れないが、今後に支障をきたさない程度で退散しなければならない。

　また明日来ればいい。

　１週間毎日来ればどこかで必ず蓮に会えるはずだ。

「そうですが、分かりました」

　璃々子は軽く頭を下げてコンビニを出た。

　たりらりらり〜ん、らりらんらん。

　追いかけてくる音が余計だ。




　
　１週間、璃々子は毎日コンビニに通ったが蓮には会えなかった。

「世那ちゃん、ほんとに蓮はあのコンビニでバイトするって言ってたの？」

　璃々子は２本目のビールに口をつける。

「そう言ってたんですけどねぇ」

　世那は首をかしげる。

　もしかしたらそれから蓮の気が変わって働くのを止めてしまったか、または深夜帯で働いているのかも知れない。

　１週間通ってみて分かったのが、バイトの人数が結構いるということだ。

　２４時間営業のコンビニ、そりゃそうだ。

　すぐに蓮が見つかるなどと考えが甘かった。

　璃々子がため息をつくと、世那は「わたしも気をつけて見てみますね」と言ってくれた。

　世那は最近変わった。

　以前より物腰がやさしくなった。

　例の相手と上手くいったのだろう。

　人は自分が幸せだと人にもやさしくなれるものだ。

　人間ができている人は自分が不幸な時でも人にやさしくできるが、幸せなのに人に意地悪な人はそういない。

　一見幸せそうに見えても、人には見えないところで不幸だったりするのだ。

　例えば金持ちの夫を持ち何不自由なくしているように見えても、夫が浮気しているとか、よくある話だ。

　カランとドアベルが鳴る。

「あ、璃々子さんお久しぶり」

　小春が風と共に店に入ってくる。

「あ！小春ちゃん、久しぶりぃ」

　璃々子が手を伸ばすと小春はぎゅっとその手を握り、璃々子の横に座った。