卒業
第二章 現実



ある日の夜、瀬野尾くんからメールが来た。





【 久しぶりに飲みに行こうよ
なんか美味しいもの食べよう
忙しい?
連絡まってるね 】





今度のお誘いは美味しいもの食べながら飲もう、か。




そう言えば、ちゃんとネックレス渡したかな?
彼女さん喜んだのかな?


瀬野尾くんから連絡が来るのは、この間ジュエリーショップへ行った以来。







私達の会う回数はおおよそ月に1回くらい。
その会う約束もだいたい瀬野尾くんから。




彼女がいると分かっているから、私から瀬野尾くんには連絡しない。





そして私は絶対に瀬野尾くんのお誘いは断らない。



その理由はひとつ。






会いたいから…………






それだけ。


こんなんだからかな。瀬野尾くんの都合のいい女になっている。



自分でも分かってる。こんなことじゃダメだって。



そもそも可愛く片思いしている歳じゃないし。まったく10年も片思いとか、相手が知ったら気持ち悪がるレベル。



そろそろ現実を見つめないと………



分かってる。



もう瀬野尾くんから卒業しなきゃって。



それでも…………



瀬野尾くんに彼女がいても、諦めきれないのは………



瀬野尾くんが変わらず私に優しいから
瀬野尾くんが変わらず私に笑顔をくれるから



なんてね…………



瀬野尾くんのせいにしている。



最低だな、私。



ただ瀬野尾くんのことが好きなだけ。
一緒にいたいだけ。



瀬野尾くんの笑顔を、瀬野尾くんのいろんな顔を、すぐ近くで見ていたいだけ。

瀬野尾くんの声を耳元で聞いていたいだけ。




告白すれば?
そう思うよね………
でもね、一緒にいすぎたんだよね。
私たちは長い時間を友達として過ごしてしまったの。




このバランスを壊したくない。

瀬野尾くんから離れたくない。




彼女になりたいなんて求めない……
もう求められない……











本音?




本心?






< 8 / 87 >

この作品をシェア

pagetop