向日葵
第一章-春風-

出会う春

夢を見た。


男女の言い争う声と、食器の割れる音。


忘れたいはずなのに、こびり付いたように鮮明に思い出す。


辿る記憶は、幼いあの日がフラッシュバックして。


いつもいつも、頭が割れそうに痛い。








ピピピッとアラームの鳴る携帯を手探りで止めた時、それには昼を迎えるより少し前の時刻が表示されていた。


カーテンを閉め切っているはずなのに、そこから透けるように漏れる陽射しは、部屋の色を一段明るく染める。


最悪な夢を見てしまったとあたしは、重い体を起き上がらせながら、とりあえず的に空腹に耐えかね、キッチンに向かった。


そのまま迷うこともなく戸棚を開け、一番上に置かれているカップラーメンのひとつを適当に取り出し、やかんに水を入れてコンロに掛ける。


だけどもお湯が沸くまでの時間の時間を持て余し、再びベッドへと戻り、真っ赤な携帯を操作したのだが、

当たり前のようにそれには着信はおろか、メールの一件さえも入って来てはおらず、無意識のうちにため息をひとつ落としてしまう。


どうしたものかと考えを巡らせているうちに、沸騰したやかんが鳴り、ひとまず考えることを止め、少しばかり早いお昼ご飯を食べることに。


人間、背に腹は代えられないしね、と。


ひとりっきりのリビングのテーブルへと腰を降ろし、部屋の中を見渡せば、いつの間にか随分あたしの物が増えたな、と思わずにはいられない。


気付けば家を出て、一年半が過ぎていた。


ろくでもない毎日の繰り返しだけど、それでもあの頃よりは、ずっと良い。



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