向日葵
あたしの地元へと向かう車内、クロは智也に電話を掛けていた。


何を話していたのかは知らないけれど、あたしはただ、窓の外へと視線を移したまま。


通勤時間は少し過ぎ、街はまるで人々を受け入れてでもいるように、にわかに活気づいているようにも見受けられた。



「ねぇ。」


「ん?」


「クロのお父さんって、今どうしてる?」


聞いて良いことなのはわからなかったけど、それでもちゃんと聞いておきたかった。


クロの歩んできた道や、見てきたもの、そして抱えている全てのものを、あたしも知っておきたかったんだ。



「俺、知らないんだ。」


「…え?」


「あの後、結局アル中で強制入院させられたらしいけど、病院なんてどこかも知らないし。
まぁ、親父を殺そうとした俺になんて教えてくれるはずもないだろうけど。」


「…そう、なんだ…」


「どこで暮らしてるのか、それ以前に生きてるのか死んでるのかも知らないしさ。
だから、夏希は気にしなくて良いよ。」


肩をすくめたようにクロは、そう言って煙草を咥えた。


流れている洋楽に乗せ、白灰色の煙が漂う様に目を細める横顔は、チラリとだけあたしを伺うように動く。



「…今でも、死んでほしいとか思う?」


「どうだろうね。
けど、あんなヤツのために俺が殺人犯になるなんて馬鹿げてるし、今はこれで良かったと思ってるよ。」


クロがこんな答えを出せるまで、どれほどもがき、そして苦しんできただろう。


そんなことを思うと少しばかり胸が痛くなり、そんなあたしに“心配すんなよ”と彼は、言葉を掛けた。


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