向日葵

愛しくて

別に誕生日だから早起きしようと思ったわけじゃないけど、それでも今日もまた、目覚ましが鳴るより早くに目が覚めた。


携帯で時間を確認してみれば、智也と香世ちゃんからおめでとうメールが届いて、思わず似たもの親子だと思って口元を緩めてしまう。


煙草を咥え、テレビがないから携帯でニュースを一通り確認して、それが終わったら朝食を適当に作り、あたしの朝が始まるのだ。


とは言え今日は、別に仕事じゃないし、午後から病院に行くだけなので、それまでの時間は暇を持て余しているのが実情なんだけど。


久しぶりに、自分へのご褒美でも買おうかな、なんて思ってみたり。


未だにクロの名前を電話帳から削除出来ないでいるけど、期待したってあの人が、あたしの誕生日なんて祝ってくれるはずもない。


だって教えてないんだし、第一あたしだって、あの人の誕生日なんて知らないんだから。


太陽の陽が部屋全体を染めるように照らし、今日も空は雲ひとつないくらいに快晴のようだ。


昨日おばあちゃんがタッパに詰めてくれた煮物をつつきながら、やっぱり虚しさは拭えないまま。



「…美容院でも行こうかな。」


呟いた言葉は部屋に溶け、いつもながらに返事なんて返って来ない。


最近は独り言も増えてしまった気がするし、あたしは本気でヤバいのかもなと、そんなことを思ってしまう。



『なぁ、夏希。』


『呼び捨てしないで。』


『お前だって呼び捨てじゃん。』


『あたしは良いの。』


『自己中だな。』


『アンタに言われたくないから。』


不意にまた、こんな他愛もない会話ばかりを思い出し、折角のおばあちゃんの煮物の味がわからなくなりそうで、それが堪らなく嫌だった。


こんな自分も、何もかも。



♪~♪~♪

刹那、あたしの携帯が着信の音を鳴らした。


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