向日葵
『って、聞いてる?』


「…えっ、あぁ、うん…」


『じゃあ、時間と場所伝えたかんね?』


「…うん、ありがと。」


『てか、みんな来てくれなきゃあたしの立場もないわけだし。
つーことで、夏希も参加でよろしくぅ!』


「はっ、ちょっ!」


どうしたものかと思って適当に相槌ばかりを繰り返していれば、そんな言葉と共に、ブツッと通話が遮断されてしまって。


ポカンとしたままにあたしは、もう誰とも繋がっていないそれを眺めることしか出来なくなってしまう。


そして数秒の後、これがいかに面倒くさいことなのかと気付き、頭を抱えたのは言うまでもない。



地元と言っても、たかだか隣街。


だけどもあの場所には、良い思い出さえも全て消し去るほどに、嫌な過去ばかりが残ったまま。


消化しきれていない苦々しいばかりの記憶が、頭の中をぐるぐる廻る。


そして思い出せば思い出すほどに手が震え、もう何ともないはずの古傷が、まるでえぐられたように痛みを放つのだ。


呼吸が出来ないほどに胸が締め付けられ、気を抜けば泣き出してしまいそうであたしは、それを振り払うように閉じた携帯に再び手を掛けた。


誰でも良いからコールして、片っ端から電話して。


そうでもしなければあたしは、真っ黒な記憶に飲み込まれてしまいそうになるから。


それがとても、怖くて仕方がなかった。



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