騎士団長のお気に召すまま
「もしあなたが引き受けてくださると言ってくれるのであれば、優先してあなたを受け入れましょう」


「もちろん、働いていただ分の給与はお支払いします」とシアンは付け加えた。

父親の仕事が失敗に終わった今、ミルフォード子爵家の収入はほとんどない。今までに貯蓄してきたわずかばかりの財産でなんとかしのいでいる状況だが、それはいつまでも続かないだろうことはアメリアも分かっていた。

騎士団での仕事、それもシアンが婚約を考えてくれると言ってくれているのなら、これ以上の好条件で働ける場所はないだろう。


「引き受けます。ぜひ、働かせてください」


アメリアの言葉に動揺したのは父親であるミルフォード子爵だ。


「アメリア!何を言って…」


動揺してアメリアを諫めようとする子爵に、アメリアは鋭い目を向けた。

確かにこれは、通常ではあり得ないこと。仮にも貴族の娘に労働を勧めるなど、舐められていると言っても過言ではない。

しかし、うまくいけば一度は断れた縁談も結び直せるかもしれない。せっかく手にしたこの機を逃すわけにはいかないとアメリアは強く思っていたのだ。


「婚約のことを考えると言いましたが、アメリア嬢。婚約をすると確約はしませんよ。むしろ確率はずっと低い。それでもよろしいのですか?」


窮地を免れ明るい未来を思い描くアメリアに釘を刺すようなシオンの言葉だが、アメリアは負けなかった。


「臨むところですわ」


全てはここから始まるのだ。ミルフォード家の存続も、アメリアの行く先も。

絶対に婚約してやるんだという強い決意に満ちていた。


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