騎士団長のお気に召すまま
「しかしアメリア様は見目麗しゅうございます。容姿も中身も。きっとその美しさを認めてくださる方が現れるのでは?」

「見目麗しいご令嬢なんてこの世にいっくらでもいるわ」


せっかくの言葉もアメリアはばっさり切って捨てる。


貴族の娘たちはみな自分の容姿に磨きをかけることを怠らない。見た目はもちろんのこと、中身さえも美しくなろうと日々努力に努力を積み重ねているのだ。

そのため自分より優れた容姿を持つものはいくらでもいるのだとアメリアは思っていた。


「それに今こんな時に世辞なんて結構よ」


他の令嬢が見目麗しいと思っているアメリアは、一度も自分の容姿を美しいなどと思ったことはなかった。

美しくなろうと思うことは多くとも、自分が特別美しいわけではないと思っていたのだ。

それどころか、容姿以外の部分で他の令嬢に劣る部分が多くあると心を曇らせていた。


「そんなことはございません。セレナ様は領地内ではいちばんに美しいお嬢様でございます」


ロイドの言う通り、アメリアはミルフォード家の領内ではいちばんに美しい娘だ。

それはこの小さな領地ではアメリアだけが美しさに磨きをかけることができる環境にあったということもそうだが、生まれつき美しい容姿をもっていたのだ。

だがアメリアは自分の認識を貴族社会の中で変にこじれてしまった。自分が他人に褒められてもその裏には何かあるのでは、と常に考えるようになってしまったのだ。

ロイドは何度もその認識を改めようとありとあらゆる手段を試したのだが、ついにアメリアが18歳になっても直りはしなかった。


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