騎士団長のお気に召すまま
それからアメリアはシアンのいる団長室の前に来た。

それはこの辞令の真相を知るためだった。

今回の辞令はあまりにも、あまりにもおかしいのだ。新入りであり、仕事もろくにできない自分が、栄えある団長室の担当になるなどあり得ない。

あのシアンのことだ、何の理由もなくアメリアを自分の近くに置くはずがない。何か意図があるに違いないとアメリアは思っていたのだ。

「失礼いたします」と団長室に入れば、執務室の机の上に資料を積み上げたシアンが手に持つ資料から顔を上げずに「ああ、貴女ですか」と返事をした。

まるでアメリアがここに来ると最初から分かっていたようで、アメリアにはそれがひどく苛立った。


「シアン様、これは一体どういうことでしょうか?」


単刀直入にアメリアが言うと、シアンは資料に目を通しながら「何がです?」と涼しい顔で白を切る。

アメリアは苛立ちながら「分かっていらっしゃるのでしょう!?」と語意を強めて拳を握った。


「なぜ私を団長室の担当になさったのです!」


するとシアンは「ああ、そのことですか」とまるでどうでもいいことのように言うから更にアメリアは苛立った。


「昨日、貴女は言いましたよね。底辺貴族の底力を見ていろと」

確かにそう言ったと昨日のことを思い出しながら、「それが、何だというのです」とアメリアは尋ねる。


「だから、見てみようかと思いまして。そのためには団長室担当になった方が見やすいでしょう?」


何か文句があるかと言わんばかりの言い方にアメリアは大きく溜め息を吐いた。

それを見たシアンは顔を上げて「不服ですか?」と問う。

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