【完】孤独な闇の中、命懸けの恋に堕ちた。







このままじゃダメだって分かってるけど...



蘭君に会う勇気も合わせる顔もない。




結局あの日、謝らずに、蘭君に無理矢理?渡されたお金でタクシーを呼んで帰ってしまった。




泣きすぎて目はウサギみたいに赤く腫れ、それを運転手さんに見られた時は、咄嗟に両手で顔を隠した。




『若いうちは辛いこといっぱい経験しとかなきゃ、人の気持ちも考えられないような大人になっちまうからな...』



独り言を呟く運転手さんの声は、タクシー内で流されているラジオの音と一緒に消えていき。



なんでそんなこと突然言い出すの?って、その時は思ってた。



でも。



出会って数秒で知らない人を慰(なぐさ)められる運転手さんって...ほんと素敵だ。

...そのせいでまた違った涙が出てきちゃったけど。




少しだけ元気が出たあの日。



だけど、やっぱり。



蘭君に会えない日々が続く。



勇気が出ないの...彼に会う勇気が...。




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