雪と断罪とそして、紅


「……ん?死んだか……」





目の前の瀧澤は目を剥いて、だらしなく舌を出して泡を吹きながら死んでいた。





好きだった人の死に際はあまりにも無様だった。





裏切りと憎しみを向けた男は最期は憎しみを抱いていた女に殺された。




何とも滑稽な話だ。






「終わったのかい?」





すると、切碕が静かに部屋の中に入ってきた。





私は頷くと瀧澤の脇に落ちている奴がさっきまで見ていたものを拾い上げる。





それは写真で、幸せそうに笑うお父様とお母様がいた。





あぁ、お母様は本当にお父様を愛してたんだ……。





お父様は瀧澤が言うように強引な手を使ってお母様を瀧澤から奪ったのかもしれない。





それでも、お母様は……。





「男女の数だけ愛の形がある。でも、それが必ずしも幸せだとは限らない。龍澤聖の愛は母の愛を独り占めしたいが為のものだった」





ふと、切碕の呟きが聞こえ、私は切碕の方を見た。





「君の愛はどんな形なんだい?」





「私の形は……歪んでる気がする」





瀧澤の遺体に視線を戻しながら呟くと、切碕が満足そうな顔をしているのが目端に移った。





それから私は切碕の仲間に引き込まれ、人間を人形のように遊ぶ殺人鬼へと堕ちた──。
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