雪と断罪とそして、紅
「アイツは他の者と違って外見に難があったが、優秀で良かった」
「そうですね。やはり、獣の耳が出来たのはあそこで安倍晴明よ母親が狐だからと言って狐の遺伝子を入れたのがまずかったようですね」
他の研究員達は何かをパソコンに打ち込みながらそんなことを話している。
安倍晴明は人間に化けた妖狐と人間の子だと言われている。
その為か、安倍晴明のDNAを作り出す際に狐のDNAを組み込んだらしい。
それが悪かったのか、私の耳は狐の耳で怒ったり陰陽術を使うときは狐の顔に変わってしまう。
……まあ、研究員達からすれば、数少ない成功体には代わりないようだが。
「明晴」
ふと、呼び慣れない自分の名前を呼ばれ、私は名前をくれた人を見た。
胸のところにあるネームプレートには≪藤邦三月≫と書かれていて、この研究施設の責任者で名家と教えられた家の次期当主だ。
彼女の隣にはその夫もいる。
「潮が特例で嫁に行ってからどうなるかと思ったが……。まあ、何とかなって良かった」
潮って確かだいぶん前に特例で、事情を知る刑事の所に嫁いだ≪作られた人間≫のことだったな。
その刑事との間には二人の子供が生まれたという。
まさか、人並みの幸せを手に入れるとは……。
心底驚いていると、閉ざされていたドアが突然開いた。