Mermaid ~人魚姫の物語~

「マリナ様~どこにいらっしゃるんですか~ ?」

「マリナ様~」

お城へ帰るとたくさんの人が私のことを探していた。

ゆっくりとお城の中へ忍び込む。

すると

「マリナ!どこにいたんだい?」

と突然後ろから声をかけられた。

「ケ、ケルピー驚かさないでよ...」

心臓が止まりそうになる。

お父様だったら叱られるどころじゃなかっただろう...

よかった...

そう私が胸をなでおろしていると

「マリナ、また海の上へ行っていたのか」

と後ろから聞こえてきた。

振り返るとお父様が腕を組んで立っていた。

「お、お父様...」

「なぜ私の言うことがきけないのだ」

そう言ったお父様の顔はとても怖かった。

「人間を助けたというのは本当か?」

「えっ...」

お父様の突然の言葉に私は凍りついた。

「本当のようだな」

私はうつむくことしかできない。

「人間など助ける価値もないというのに。そのままにしておけばいいものを」

ひどい...

なんでそんなことを言うのよ...

「そうしたら死んでいたわ」

「だったらなんだというのだ。あいつらは人魚を殺し、魚を食べる野蛮な奴等だ」

違う。

お父様は分かっていない。

あんなに素晴らしいものを作り出せる人間が野蛮なわけがない。

私にはわかる。

彼の優しい笑顔。

人間は野蛮なんかじゃない!

「彼を愛してるの!」

私は自分の言葉に驚いた。

自分の気持ちに気付いてしまったのだ。

「血迷ったか...お前がこの城から出ることを一切禁止する」

お父様のその言葉に怒りがこみ上げる。

もう私を縛り付けないで。

「私は子供じゃないのよ!お父様の言いなりにはならないわ!」

私はお父様に向かって怒鳴っていた。

「好きにするがいい。だがこの城から出るということは、お前はもう私の娘ではないということだ」

お父様の冷い言葉に胸が締め付けられる。

娘じゃなくなる...

今までそんなこと考えたことがなかった。

けれど当然のことなのだ。

「分かっています」

私はそうお父様に返事をすると静かにお城を出た。

涙が止まらなかった。

だけどこれでよかった。

「お父様、お姉様、ケルピー、みんなさようなら...」

もう決めた。

私は人間になる。

そうして私は海の魔女の元へと向かった...

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